
さかはら あつし:
プロデューサーとしてはカンヌ映画祭で「Bean Cake」という神田沙也加さんのデビュー作となった短編映画でパルムドールをもらったこともあります。
最近はドキュメンタリー映画の「AGANAI 地下鉄サリン事件と私」という映画を監督しました。コロナ禍の中で公開したのであまり話題にはなりませんでしたが、アジアで最大のEBS International Documentary Festivalではグランプリをいただきました。


カンヌ国際映画祭にて
経済学者Paul Milgromと2025年4月Palo Altoにて
映画監督というのは本当ですか?
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実は、その間に作った習作の短編映画はどこの映画祭にも行かなかったのですが、友人の経済学者のPaul Milgromが少し資金を協力してくれたのですが、ノーベル経済学賞を受賞しました。ノーベル経済学賞受賞プロデューサーと映画を作った珍しい映画監督になりますね。
今はロジグリッシュで忙しいですが余裕ができたらまた作りたいと思います。
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小説家というのは本当ですか?
さかはら あつし:
何冊か本を出していたのですが「AGANAI 地下鉄サリン事件と私」のポストプロダクションでトラブルが起こり。。。
腰椎の圧迫骨折をしていて体が自由にならないのでどうしたものかと考えて小説スタイルのビジネス書を書いて出したのですが、映画の公開後に編集者が「小説として文庫にしませんか?」とコンタクトしてきてくれ「ピーナッツ一粒ですべてを変える」を出版し小説家となりました。
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シリコンバレーのスタートアップに参加していたというのは本当ですか?
さかはら あつし:
カリフォルニア大学バークレー校のHaas School of BusinessのMBAプログラムに在学中に博士課程の学生のスタートアップに参加しました(オフィスはPalo Altoにありました)。
資金調達が終わるとその会社のシードインベスターのMenlo Parkにある会社に転籍しました。
その会社はOrdinate Corporationという会社で、現在、日経新聞社が日本で販売しているVersant(当時はPhonePass)という試験の開発をしていました。
カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞したことをキッカケに日本に帰国しました。

Versantを開発した言語学者のJared Bernstein博士と
(2025年4月、サンフランシスコにて)
さかはら あつし:
ロジグリッシュの共同創業に至るには幾つもの巡り合わせが重なりました。
一つはVersantという言語試験に携わっていたことです。
日本に帰国してから、原田康也先生(現在ロジグリッシュの学術的監修をお願いしていてだいています)経由で知り合った学生に私塾を開いて起業の仕方を教えたりしていたのですが、どうしても英語力がネックになり私のネットワークを使いこなせないと気づき英語教室を開いたこともありました。私は講師ではありませんでしたが、主催者として徹底的に研究しました。文法書をぼろぼろになるほど読み込みました。実は留学前、留学中、シリコンバレーで働いていた時よりも英語という言語に向き合った時間だったと思います。
「AGANAI 地下鉄サリン事件と私」の映画のポストプロダクションでトラブルが発生し、、、、
そんな時にたまたま京都精華大学で英語担当の非常勤講師を募集していると知り応募して教え始めました。(その経験は「英語力という幻想」に書いているので是非読んでみてください!)
そんな時、大阪公立大学の経済学部で経済学を英語で教えないかとお声がけいただきました。
いわゆるEMI(English as a medium of instruction)の授業の担当ですが、面白そうなので引き受けました。その二年目に「先生、英語教育のスタートアップをしたい、手伝って欲しいです。」と言ってきたのが当時まだ学部2年生で英語ディベートチャンピオンの藤川翔帆さんでした。藤川さんなら私の海外のネットワークを駆使しても怯むことなく頑張ってくれるなと思い本格的に仕掛けることにしました。
ロジグリッシュを立ち上げたきっかけを教えてください。
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ロジグリッシュのメソッドには原体験が関わっていますか?
さかはら あつし:
二つの原体験が重なっているように思います。
学生時代にアメリカからの留学生のサポートをしていましたが、本当に英語を覚えたのは10万円を自ら出して学園祭で一緒にホットドッグを売った経験でした。それは「ともかく英語で意味を伝える」ことから英語を学ぶという経験になりました。
英語で脚本を書きたいという夢が学生時代からありました。ですので、英語を試験勉強のために学習するという意識はありませんでしたので一般的ではない目的で英語を学習してきたように思います。
それが、英語力の測定手段としての試験の役割は認めつつも試験を目的にする英語学習には諸手を上げて賛成しないというロジグリッシュの考え方に結びついているように思います。
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博士号を取得したのはどうしてですか?
さかはら あつし:
藤川さんに出会う前に博士課程で学び始めたのですが、ちょうど「AGANAI 地下鉄サリン事件と私」を公開した後でした。
大学で教え始めると経営学修士(MBA)では不十分だと感じていましたので、博士号取得を考え始めました。興味のあるテーマが複数あり、最初、経済学で博士号をとろうと考えたのですが、結局、工学博士号を取得しました。
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どうしてロジグリッシュのアドバイザーは多彩なのですか?
さかはら あつし:
学生時代に京都の岡崎にあったアメリカ人の留学生がいる施設がありました。スタンフォード大学やハーバード大学などから毎年留学生が沢山来ていたのですが、そこの留学生の留学生活を支援する活動を学生団体を作ってしていました。
本当に才能溢れる人が多かった。
カンヌ映画祭でパルムドールをもらうことになるハリウッドのDavid Greeenspan監督、シリコンバレーでYahooを創業することになるJerry YangやDavid Filoもいました。私の所属するゼミに聴講生としてきたAkiko Yamazakiは後にJerry Yangの奥さんになるのですが、そういう人たちに学生時代に出会えたことが私の大きな財産でした。あとは、留学時代の仲間や偶然出会った人たちも少なくないです。
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どういう ところに藤川さんの才能を感じますか?
さかはら あつし:
突出した英語力というのは日本の英語ディベートのチャンピオンで日本代表になったこともあるので当然なのですが、ある限られた一定の持ち時間の中で課題を解決していくスピード感が凄まじいです。
私たちのビジネスはスケール感の大きな本格的なビジネスを目指しているのですが、柔軟な発想と批判的思考力を兼ね備えていること、ビジネスの流れを読めることが大きいです。
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役割分担は?
さかはら あつし:
私たちはグローバル市場を目指すので海外の私のネットワークを活かせるように私がグローバルのCEOを、Chief Logiglishで株式会社ロジグリッシュの代表取締役を藤川さんがという編成になっています。
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ロジグリッシュは他と何が違うのですか?
さかはら あつし:
知財というと工学、理学、医学などの知財を連想することが多いのですが、それだけではなくて人文知、社会科学知も大切にしたいとロジグリッシュを創業しましたので、私たちのアプローチは根本的に他社とは異なります。
私たちはみな私たち自身の学習体験から自由ではありませんが、真の教育の専門家は自己の学習体験から自由であろうとする強い意志を持っていると思います。そういう意味では「私たちはこういう学習体験を学習者に体験していただいた」ということはあっても「私はこう学習した」という言い方は決してしない会社でありたいです。
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最後にロジグリッシュへの思いを。
さかはら あつし:
私自身の教育に携わった経験でもあるのですが、学びたくない人はいない、どんな英語が苦手な人でも実は「なれるなら英語を話せるようになりたい」と思っているのです。
私たちはその気持ちに応えるべく頑張っていきたいと思います。

さかはら あつし
大阪公立大学経済学部非常勤講師。2020年度〜2024年度には京都精華大学において非常勤講師として英語を担当。京都大学経済学部卒業後、電通を経てカリフォルニア大学バークレー校にてMBA取得。シリコンバレーにてAIと音声認識技術を駆使した言語能力測定試験Versantのビジネス開発の元担当者。2025年3月博士号(工学)を取得。小説執筆、映画制作など幅広く活動している。プロデューサーとしてはカンヌ映画祭パルム・ドール賞、監督としてEDIFではグランプリを受賞、現在の本社(日本)では取締役を務める。地下鉄サリン事件の被害者として被害者の支援、化学兵器の禁止にNGO活動を開始、2013年にノーベル平和賞を受賞した国際機関OPCWに参加し共同声明を読み上げる。
2023-現在
共同創業者, CEO
株式会社 ロジグリッシュ
EdTechを2023年2月1日に共同創業。
2022-現在
会員
一般社団法人日本ペンクラブ
国際ペンクラブの日本センターであり、日本の文筆家で構成されている。


